病気を「自分の一部」として受け入れ、焦らず歩む道のり:心穏やかに過ごすための体験談
この「ストレスとの声、みんなの体験談」をご覧になっている皆様の中には、病気を診断されて間もない方、あるいは長年病気と付き合っていらっしゃる方、様々な状況の方がいらっしゃるかと思います。病気と向き合う中で感じるストレスや不安は、言葉に尽くせないほど大きなものですよね。私もまた、病気という現実をなかなか受け止められずに苦しんだ一人です。今日は、私がどのようにして病気を「自分の一部」として捉え、焦らず心穏やかに過ごせるようになっていったのか、その道のりをお話しさせてください。
病気判明と直後の感情:現実を拒絶したかった日々
私が病気を診断されたのは、突然のことでした。それまで当たり前に送っていた日常が、一瞬にして崩れ去ったような感覚でした。診断名を聞いたとき、正直なところ、頭が真っ白になり、現実のこととは思えませんでした。「なぜ、自分が」「何か悪い夢を見ているのではないか」という思いが、繰り返し心の中を駆け巡りました。
診断を受けた直後は、この現実を拒絶したい気持ちが非常に強かったです。友人や家族にも、病気について話すことができませんでした。話せば、それが現実になってしまうような気がしたからです。インターネットで病気について調べれば調べるほど、将来への不安は募るばかりでした。治療のこと、仕事のこと、そして何より、「健康だった頃の自分にはもう戻れないのではないか」という恐れが、大きなストレスとなって私を締め付けました。
具体的なストレスとその向き合い方:受け入れられない自分への葛藤
病気を受け入れられないこと自体が、私にとって最も大きなストレスの一つでした。
まず感じたのは、「健康な自分」と「病気になった自分」との間の大きな隔たりです。以前は簡単にできていたことができなくなる。体力や気力の衰えを感じる。そんな現実と向き合うたびに、「病気になる前の自分に戻りたい」という強い願望と、「もう戻れない」という絶望感の間で心が揺れ動きました。周りの人が当たり前に生活している様子を見るたびに、取り残されてしまったような孤独感を感じ、焦りにも似た気持ちが募りました。
また、病気を「受け入れなければならない」というプレッシャーも感じていました。「病気と前向きに付き合っていこう」「受け入れることが大切だ」という言葉を耳にするたびに、それができない自分を責めてしまうこともありました。「どうして私は、こんなにも弱いのだろう」と、自己肯定感がどんどん失われていくように感じました。
このようなストレスに対し、最初は病気のことを考えないようにしたり、無理に明るく振る舞おうとしたりしました。しかし、それでは心の中の不安や悲しみは消えず、かえって疲れてしまうだけでした。感情に蓋をすることは、病気を受け入れることからさらに遠ざかるだけなのだと気づきました。
そこで、少しずつ試みるようになったのは、自分の感情を否定しないことです。「辛い」「悲しい」「怖い」といった素直な感情を、「感じてはいけないもの」と決めつけず、ただ「今、自分はこう感じているんだな」と認める練習をしました。ノートに書き出してみたり、信頼できる数少ない友人に、病気のことから離れて他愛もない話をしたりすることも、心を落ち着かせる一助となりました。
克服・軽減の道のり:焦りを手放し、自分らしいペースを見つける
病気を「受け入れる」というプロセスは、一度に劇的に起こるものではない、ということに気づいた時、少し心が軽くなりました。それは、階段を一段ずつ上るように、あるいは、寄せては返す波のように、ゆっくりと進んでいくものなのだ、と思えるようになったのです。
私にとって大きな転換点となったのは、「病気があるからといって、自分の価値が失われるわけではない」と思えるようになったことです。健康な頃の自分と比較するのをやめ、「病気がある今の自分」にできることは何か、という視点を持つように心がけました。
例えば、以前のように長時間働くことは難しくなりましたが、短時間でも集中して取り組めることを見つけたり、体力に合わせて休憩を挟みながら趣味の時間を大切にしたり。大きな目標ではなく、今日の体調でできる小さな目標を立て、それが達成できたときに自分を褒めるようにしました。こうした小さな成功体験が、失いかけていた自信を少しずつ取り戻す手助けをしてくれました。
また、「無理をしない」ということを、自分に許せるようになったのも大きな変化でした。体調が優れない時は、遠慮なく休息をとる。人との約束も、無理そうなら正直に伝えてリスケジュールをお願いする。最初は申し訳ない気持ちもありましたが、自分の心と体に正直でいることが、結果として心穏やかに過ごすための一番の方法だと気づきました。
病気を「敵」として戦うのではなく、「これから長く付き合っていくパートナー」のように捉え直すことも、心の持ち方を変える上で役立ちました。病気があることで気づけた大切なこと、例えば、家族や友人の優しさ、日々の小さな幸せ、自分の心身の声に耳を傾けることの重要性など、病気が教えてくれた「価値」に目を向けるようにしたのです。
焦りを手放し、自分らしいペースで病気と向き合うこと。これが、私がストレスを軽減し、心穏やかに過ごせるようになるための最も重要な一歩でした。
現在と読者へのメッセージ:焦らなくて大丈夫、あなたのペースで
現在、私は病気と完全に「仲良し」になったわけではありませんが、「自分の一部」として共に生きているという感覚を持つことができるようになりました。もちろん、体調の波もありますし、将来への不安が全くなくなったわけではありません。でも、病気がある自分を否定することなく、今の自分の状況を受け入れ、その中でできること、楽しめることを見つけることの大切さを知りました。
もし今、病気という現実を受け入れられずに苦しんでいらっしゃる方がいましたら、どうかご自分を責めないでください。受け入れは、決して簡単なことではありません。そして、それは決して「病気を好きになる」ということでもありません。ただ、病気がある今の自分を、否定せず、認めようとすること。そのプロセスは、一人ひとり異なり、時間もかかります。焦らなくて大丈夫です。
あなたの心と体に正直に、一歩ずつ、あなたのペースで進んでいってください。時には立ち止まったり、後戻りしてしまったように感じたりすることもあるかもしれません。それでも、あなたが自分自身の声に耳を傾け、大切にしようとしていること自体が、素晴らしい一歩なのです。
この場所で、あなたの体験談が、誰かの希望の光となることを願っています。そして、あなたが一人ではないことを、どうか忘れないでください。私たちは皆、それぞれの病気と向き合いながら、今日という日を懸命に生きています。