病気がもたらした仕事とお金の不安:現実と向き合い、自分らしいペースを見つけるまで
病気によるストレスと向き合う皆様へ
この度、「ストレスとの声、みんなの体験談」という場で、私の経験をお話しさせていただける機会をいただきました。病気と診断され、日々の生活の中で様々なストレスと向き合っている皆様に、私の体験が少しでもお役に立てれば、あるいは「一人ではないんだな」と感じていただけるきっかけになれば幸いです。
病気によるストレスは、身体的な辛さだけではありません。治療への不安、将来への不確かさ、人間関係の変化、そして、生活を支える基盤である仕事や経済的な問題も、大きな心の負担となります。私もまた、診断を受けた後、特に「これからどうやって生活していけば良いのだろう」という、仕事とお金に関する切実な不安に直面しました。ここでは、その具体的なストレスと、私がどのように向き合い、自分なりの折り合いをつけていったのかをお話ししたいと思います。
診断後の衝撃と、すぐに頭をよぎった現実的な不安
病名を聞いたとき、頭が真っ白になったことを覚えています。医師の説明を聞きながらも、どこか現実感がなく、まるで他人事のように感じていました。しかし、病院を出て、一人になった瞬間に、じわじわと不安が押し寄せてきました。
将来への漠然とした不安はもちろんのこと、それと同時に強く感じたのが、現実的な問題への焦りでした。「これから治療が始まるとして、仕事はどうなるのだろうか」「収入が減ったら、生活費や医療費はどうなるのか」。当時の私はフルタイムで働いており、それが主な収入源でした。病気によって今まで通りに働けなくなる可能性を考えると、経済的な不安はあっという間に膨れ上がり、病気そのものよりも、そちらの方が大きく感じられる時期さえありました。
具体的なストレス:仕事への影響と経済的な困難
病気によるストレスは多岐にわたりましたが、特に私を苦しめたのは、以下の点でした。
まず、仕事への影響です。体力的な問題から、今までと同じペースで働くことが難しくなりました。出勤自体が辛い日も増え、集中力も続かず、思うようにパフォーマンスが出せない自分に苛立ちを感じることもありました。また、周囲に病気のことをどう説明すれば良いのか、理解してもらえるのか、といった人間関係に関する不安も常にありました。休職や退職を検討する可能性も出てくる中で、キャリアが断たれてしまうのではないかという恐れも感じていました。
次に、経済的な困難です。治療には医療費がかかりますし、通院のための交通費なども積み重なります。また、体調によっては働ける時間が限られたり、一時的に収入が途絶えたりする可能性もありました。それまでの貯蓄では足りるのか、今後どのように家計をやり繰りしていけば良いのか、先の見えない状況に強い不安を抱きました。特に、病気が長期化する可能性を考えると、その不安はさらに大きくなりました。
ストレスとの向き合い方:現実を受け入れ、一つずつ情報収集を
これらのストレスに対して、最初は何から手をつけて良いか分からず、ただただ不安な日々を過ごしていました。しかし、いつまでも立ち止まっているわけにはいかないと気持ちを奮い立たせ、まずは現実的な問題に一つずつ向き合うことから始めました。
最初に行ったのは、情報収集です。自分の病気や治療について調べるのと同時に、仕事に関する制度や経済的な支援について積極的に調べ始めました。会社の就業規則や福利厚生、公的な傷病手当金や医療費助成制度など、利用できる可能性のある制度について、インターネットや書籍、自治体の窓口などを通じて情報を集めました。漠然とした不安を抱えるよりも、具体的な情報を得ることで、いくらか冷静になれたように思います。
次に、職場への相談です。勇気を出して、信頼できる上司や人事担当者に病気の状況と、働き方について相談しました。すべてを正直に話すのは抵抗がありましたが、話すことで職場も状況を把握し、可能な範囲での配慮や、利用できる会社の制度について教えてもらうことができました。一人で抱え込まず、オープンに話し合うことの重要性を感じました。
また、家計の見直しも行いました。収入が減る可能性を考慮し、支出を把握し、削減できる部分はないか検討しました。これは辛い作業でもありましたが、現実的な数字を把握することで、「何ができて、何ができないのか」が明確になり、計画を立てやすくなりました。
そして、何よりも大切だと感じたのは、「完璧を目指さない」という考え方を受け入れることです。病気になる前の自分と比べて、仕事の質や量、家計の状況など、多くの点で「できないこと」が増えました。当初はそれが受け入れられず、自分を責めることもありましたが、それでは心身がさらに疲弊してしまうだけでした。病気という状況下で、できることには限界がある。無理をせず、自分の体調と相談しながら、できる範囲で最善を尽くす。そう割り切ることで、少し肩の力が抜けたように感じます。
ストレス軽減の道のり:支えと自分なりのペース
試行錯誤の中で、特に効果があったと感じることはいくつかあります。
一つは、利用できる制度やサービスを躊躇せずに活用することです。病気による経済的な支援制度や、会社のサポート体制などを利用することで、現実的な負担が軽減され、心の余裕が生まれました。遠慮せずに、頼るべき時には頼ることが重要だと学びました。
二つ目は、同じような経験を持つ人の話を聞くことです。インターネットのコミュニティや書籍などで、病気と仕事やお金の問題にどう向き合っているのか、様々な体験談に触れました。「自分だけではないんだ」「こういう方法もあるのか」と、具体的なヒントを得られたり、孤独感が和らいだりしました。
三つ目は、自分自身の心身の声に耳を傾け、無理のないペースを見つけることです。体調が良い日も悪い日もあります。悪い日には思い切って休みを取る、短時間だけ働く、人に手伝いを頼むなど、柔軟に対応することで、体調の波に翻弄されすぎないようになりました。これは仕事だけでなく、家事や日々の生活全般にも言えることです。自分にとって何が大切か、何に優先順位をつけるべきか、病気と向き合う中で改めて考える機会を得ました。
これらの経験を通じて、ストレスとの付き合い方が変わったと感じています。以前は、ストレスの原因を「なくす」ことばかり考えていましたが、今は「どうすればストレスがあっても、心穏やかに過ごせるか」「どうすれば自分にとって負担の少ない方法で問題に対処できるか」と考えるようになりました。問題は完全にはなくならないかもしれないけれど、それに圧倒されず、自分なりにコントロールできる部分を見つけること、そして、一人で抱え込まないことの大切さを痛感しています。
今、そして同じ悩みを抱える方へ
現在も、病気と仕事や経済的な問題との両立は続いています。日によって体調も変動しますし、将来への不安が全くなくなったわけではありません。しかし、病気が分かった直後の、どうして良いか分からない、ただただ焦って苦しかった時期に比べれば、随分と落ち着いて向き合えるようになったと感じています。
現実的な問題は避けて通れませんが、それを一人で抱え込む必要はありません。利用できる制度は必ずありますし、相談できる人も必ずいます。そして何より、同じように悩み、苦労しながらも、自分なりの道を見つけようと努力している人がたくさんいます。
もしあなたが今、病気による仕事やお金の不安に押しつぶされそうになっているとしたら、どうかご自身を責めないでください。その不安は、あなたが真剣に自分の人生と向き合っている証拠です。すぐに完璧な解決策が見つからなくても大丈夫です。焦らず、一つずつ、できることから情報を集めたり、誰かに相談したりしてみてください。そして、何よりもご自身の心と体を大切にしてください。
この体験談が、今まさに同じようなストレスと向き合っているあなたの、心の一筋の光や、小さな一歩を踏み出す勇気につながることを心から願っています。あなたは一人ではありません。