病気に関する情報の波にどう向き合ったか:不安を乗り越え、自分に必要な情報を見つける体験談
導入
このサイトを訪れてくださっている皆様の中には、病気を診断されたばかりで、様々な情報に触れ、不安を感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。私自身も、病気が分かった時、情報の波に翻弄され、かえって心が疲れてしまった経験があります。
ここでは、私がどのようにして病気に関する情報と向き合い、混乱の中から自分に必要な情報を見つけ、少しずつ心の平穏を取り戻していったのかについて、率直にお話ししたいと思います。同じような状況にある方が、少しでも共感し、ご自身の情報との付き合い方を考えるヒントになれば幸いです。
病気判明と直後の感情
病名を告げられた時、頭が真っ白になりました。医師からの説明も、その時は十分に理解できなかったように思います。家に帰ってまずしたことは、インターネットで自分の病気について検索することでした。
診断直後は、とにかく病気のことを知りたいという強い欲求に駆られました。この病気はどのようなものなのか、これからどうなるのか、どんな治療法があるのか、治るのか治らないのか。知れば知るほど、将来への漠然とした不安が膨らんでいきました。同時に、自分と同じ病気を持つ人の体験談や、治療に関する様々な情報が溢れていることに気づき、情報を集めることに没頭していきました。
具体的なストレスとその向き合い方
情報収集を進めるうちに、新たなストレスが生まれてきました。それは、「情報の波に溺れる」という感覚です。インターネット上には、信頼できる情報源(公的機関や医療機関のサイトなど)がある一方で、個人的なブログやフォーラム、中には医学的根拠が不明確な情報もたくさんありました。
具体的には、以下のようなストレスを感じていました。
- 情報の信頼性の判断: どの情報が正しくて、どれがそうでないのか、見分けるのが非常に難しく感じました。様々な情報源で矛盾する記述を目にし、混乱しました。
- ネガティブな情報の衝撃: 病気の進行や、稀な合併症、治療の副作用など、不安を煽るようなネガティブな情報に触れるたびに、強い恐怖や絶望感に襲われました。
- 情報過多による疲弊: あまりにも多くの情報を一度に浴びたことで、脳が疲弊し、かえって何も考えられなくなってしまうことがありました。
- 「正しい情報」への強迫観念: 病気を治すために、あるいは進行を遅らせるために、「全ての正しい情報」を手に入れなければならない、というプレッシャーを感じていました。
- 情報の断片化: 部分的な情報だけを見てしまい、病気全体像や自分の状況にどう当てはまるのかが分からず、余計に混乱しました。
こうした状況に対し、私は手当たり次第に情報を読み漁るということを続けていました。しかし、それは不安を一時的に紛らわすだけで、根本的な解決にはなりませんでした。むしろ、情報に振り回され、精神的に不安定になることが増えていきました。
克服・軽減の道のり
情報との向き合い方を変えるきっかけになったのは、ある日、あまりにも不安になりすぎて、主治医に「インターネットでこんな情報を見たのですが、私はどうなるのでしょうか」と尋ねた時のことです。主治医は私の不安を丁寧に聞き、情報の受け止め方についてアドバイスをくれました。
そこで私は、情報収集の方法を見直すことにしました。
- 信頼できる情報源を絞る: まず、情報源を限定することを意識しました。具体的には、
- 主治医や看護師さんからの直接的な情報
- 病気に関する公的な機関や専門学会の公式サイト
- 信頼できる医療機関のウェブサイト
- 病気に関する情報を提供する患者会などの情報誌やウェブサイト などを主な情報源とし、それ以外の匿名性の高い情報源からは距離を置くようにしました。
- 情報収集の目的を明確にする: 不安を解消するためではなく、「病気について正しく理解し、医師とのコミュニケーションを円滑にするため」「日常生活で気をつけるべきことを知るため」など、具体的な目的を持って情報に触れるようにしました。
- 情報のインプット量を制限する: 毎日、あるいは長時間にわたって情報検索をするのをやめました。例えば、「週に一度、この情報サイトだけを見る」というようにルールを決めたり、時間を区切ったりしました。
- 得た情報は専門家に確認する: インターネットなどで得た気になる情報は、鵜呑みにせず、必ず次の診察時に主治医や薬剤師さんに質問するようにしました。これにより、情報の正確性を確認できるだけでなく、自分の病状に合った情報なのかどうかも判断できるようになりました。
- 完璧を目指さない: 全ての情報を把握する必要はないと考えるようにしました。自分にとって必要不可欠な情報に焦点を当て、それ以外の情報は「そういう情報もあるのかもしれない」程度に受け流す練習をしました。
これらの試みを続けるうちに、情報の波に溺れる感覚は少しずつ軽減されていきました。特に、信頼できる専門家からの情報と、それに加えて同じ病気を持つ人々の具体的な体験談(ただし、医学的情報ではなく、あくまで「体験談」として)を区別して受け止めることができるようになったことが大きかったと思います。
現在と読者へのメッセージ
現在も、病気に関する情報は日々更新されていますが、私は情報との間に健全な距離感を保つことができていると感じています。無闇に不安を煽るような情報からは意識的に離れ、自分自身の心と体の声に耳を傾けることを大切にしています。
病気と向き合う過程で、情報収集は非常に重要です。しかし、情報に振り回されて心を疲弊させてしまうことは、病気と闘うエネルギーを奪ってしまいます。もし今、情報の波に疲れてしまっている方がいらっしゃいましたら、少し立ち止まって、ご自身の情報との付き合い方を見直してみてはいかがでしょうか。
信頼できる情報源を見つけること、情報のインプット量を調整すること、そして何よりも、得た情報を一人で抱え込まず、主治医や信頼できる人に相談することを心からお勧めします。情報と賢く付き合い、自分自身の心を守りながら、病気との道のりを一歩ずつ進んでいくことができると信じています。