病気になって気づいた、小さな一歩を大切にする生き方:焦りや無力感を手放すまでの道のり
病気によるストレス、小さな一歩が心の支えに
病気と診断された時、これまでの当たり前が崩れ去り、将来への不安に押しつぶされそうになることがあります。特に、以前のように自由に活動できなくなったり、目標に向かって思うように進めなくなったりすると、焦りや無力感を感じてしまうこともあるかもしれません。
私も、病気が判明してからしばらくの間、まさにそのような感情に囚われていました。今日は、私がどのようにしてそのストレスと向き合い、日々の小さな「できた」の中に心の支えを見つけていったのか、私の体験をお話しさせていただきたいと思います。同じような状況にある方の心に、少しでも寄り添うことができれば幸いです。
病気が判明した時の衝撃と失われた「普通」
私が自分の体に異変を感じ、病院で検査を受けた結果、病名が告げられたのは、ちょうどこれから新しいことに挑戦しようと張り切っていた時期のことでした。診断を受けた瞬間、頭の中が真っ白になり、目の前が暗くなるような感覚を覚えました。「なぜ自分が」「これからどうなってしまうのだろう」という不安と、「まさか」という驚きが同時に押し寄せました。
特に辛かったのは、病気によってそれまで当然だと思っていた「健康な体」が失われたこと、そして、計画していた未来が大きく変わってしまうことを実感した時でした。体力は低下し、治療による副作用で思うように動けない日が増えました。かつては簡単にこなせていた家事や仕事も、私にとっては大きな負担となり、疲労困憊してしまう日が多くなったのです。
焦り、無力感、そして自己嫌悪
体が思うように動かないことは、想像以上に大きなストレスでした。一番つらかったのは、「以前の自分ならこれくらい簡単にできたのに」という思いと、「周りの人はもっと頑張っているのに、自分は何もできない」という無力感でした。
長期的な目標を立てようとしても、体調の波があるため計画通りに進むか分からず、途中で頓挫してしまうことが続きました。そのたびに「やっぱり自分には無理なんだ」と落ち込み、自分自身を責めてしまう悪循環に陥りました。SNSなどで同世代の活躍を見かけると、置いていかれているような気持ちになり、さらに焦りが募りました。
「このままではいけない」という気持ちばかりが先行し、無理をして体調を崩すこともありました。頑張りたくても頑張れない、この状況から抜け出せないように感じていました。
小さな「できた」に光を見出すまで
そんな日々の中で、私はある日、ふと「今日できたこと」に意識を向けてみることにしました。それは、何か大きなことを成し遂げるのではなく、本当に些細なことです。例えば、「朝、ベッドから起き上がれた」「顔を洗えた」「窓を開けて空気を入れ替えた」といった、これまでは意識すらしなかったような行動でした。
最初は半信半疑でしたが、「今日の私にできたこと」を一つずつ心の中で数えたり、メモに残したりするうちに、少しずつ気持ちに変化が現れてきました。完璧に家事をこなせなくても、クイックルワイパーで床を拭けたなら、それは「できた」こと。長距離の移動は難しくても、近所を少しだけ散歩できたなら、それは「できた」こと。読みたいと思っていた本の最初の数ページだけ読めたなら、それも大切な「できた」こと。
大きな目標を追うのではなく、「今日の自分にできる範囲」で、無理なく取り組めることを見つけるようにしました。そして、どんなに小さなことでも、それができた自分を認めてあげるようにしたのです。
この「小さなできた」の積み重ねが、失いかけていた自信を少しずつ取り戻させてくれました。無力感に囚われそうになった時も、「でも、今日はこれができた」と考えることで、必要以上に自分を責めることが減りました。焦りも完全に消えたわけではありませんが、「これで良いんだ」「今の自分はこれで十分だ」と思える瞬間が増えていきました。
また、勇気を出して信頼できる家族や友人にこの話をしてみたところ、「それはすごいことだよ」「無理しないで、できることをやればいいんだよ」と肯定的な言葉をもらえました。誰かに話を聞いてもらうこと、自分の努力を認めてもらうことも、心の支えになるのだと実感しました。
今、そして同じ悩みを抱える方へ
病気との付き合いは、今も続いています。体調には波があり、思い通りにならない日もゼロではありません。しかし、私はもう以前のように、できないことにばかり目を向けて自分を責めることは少なくなりました。日々の「小さなできた」に意識を向ける習慣が、私の心を穏やかに保つ羅針盤になっています。
病気によって、私たちの生活は確かに変わりました。失ったものもあるかもしれません。しかし、だからといって、私たちの価値や能力が失われたわけではありません。
もし今、病気による制限から焦りや無力感を感じている方がいらっしゃいましたら、どうかご自身を責めすぎないでください。そして、もし可能であれば、今日のあなたにできた、どんなに小さなことでも良いので、それを一つ見つけて褒めてあげてほしいのです。
完璧でなくても大丈夫です。昨日より少しだけ前に進めたなら、それは素晴らしいことです。立ち止まってしまったとしても、また次の一歩を踏み出せる日を待てば良いのです。
小さな一歩の積み重ねが、きっとあなたの心を強くし、未来への希望を繋いでくれると信じています。私たちは一人ではありません。ここで、あなたの体験を共有し、互いに支え合えることを願っています。