病気で「前のような自分」でいられなくなった時：喪失感と向き合い、新しい日常で自分らしい幸せを見つける体験談
以前の自分と今の自分との間に生まれるギャップに苦しんでいるあなたへ
病気を抱えることになった時、様々なストレスを感じていることと思います。将来への不安、治療の辛さ、周囲との関係の変化など、その種類は人それぞれかもしれません。私自身も、診断を受けてからの日々の中で、多くのストレスと向き合ってきました。
中でも、私が最も深く、そして長く苦しめられたのは、「病気以前の自分」と「今の自分」との間に生まれる大きなギャップでした。以前は当たり前にできていたこと、感じていたこと、そして思い描いていた未来が、病気によって大きく変わってしまったことに対する、どうしようもない喪失感です。
この体験が、もしかしたら今、同じように以前の自分を失ったように感じ、戸惑いや悲しみを抱えているあなたの心に寄り添えるかもしれない。そんな願いを込めて、私の体験談を共有させていただきたいと思います。
病気判明と直後に感じた、「前のような自分」でいられなくなる不安
病気が判明した時、最初に感じたのは「まさか自分が」という驚きと、これからどうなるのだろうという漠然とした不安でした。しかし、病状や治療について知るにつれて、その不安は具体的なものへと変わっていきました。
それは、「これまで通りの生活ができなくなるのではないか」「以前のような自分ではいられなくなるのではないか」という強い恐れでした。体力的な限界、集中力の低下、外見の変化の可能性など、病気がもたらすであろう変化が頭をよぎるたび、まるで自分の一部が失われていくかのような感覚に襲われたのです。
特に辛かったのは、友人や同僚が当たり前に送っている日常を目の当たりにした時です。以前は私も同じように過ごせていたのに、もう自分は違う場所に立ってしまったのだという孤独感と、置いていかれてしまうような焦りを感じました。
失われた「普通」と、それに伴う具体的なストレス
病気による生活の変化は、私の想像以上に多岐にわたりました。仕事においては、以前のように長時間集中することが難しくなり、生産性が落ちたと感じました。趣味のスポーツは続けることができなくなり、友人とのアクティビティも制限されるようになりました。
身体的な辛さに加え、こうした「できなくなったこと」が、私に大きなストレスを与えました。特に大きかったのは、自己肯定感の低下です。以前は仕事や趣味で「できている自分」に価値を見出していた部分があったため、それが失われたことで、「自分は何の価値もない人間になってしまったのではないか」という否定的な考えに囚われるようになりました。
また、周囲に病気や体調のことを理解してもらえないと感じた時には、「どうして自分だけこんなに辛いのだろう」「誰も私の状況を分かってくれない」という孤立感を深めました。無理に明るく振る舞おうとして、心身ともに疲弊してしまうこともありました。
失われたのは、単なる「できること」だけではありませんでした。それは、病気以前の自分が持っていたであろう「未来への可能性」や「自分自身のイメージ」でした。「あの頃の自分なら、これができたはず」「この病気さえなければ、今頃は…」といった過去との比較に苦しみ、現在の自分を受け入れられない日々が続きました。これは、私にとって最も根深いストレスの一つでした。
喪失感と向き合い、新しい自分を受け入れていく道のり
こうした喪失感や自己否定の感情に、私は長い間囚われていました。しかし、ある時、これ以上過去の自分に囚われていても、今の状況は何一つ変わらないということに気づかされました。そして、少しずつ、新しい自分自身と、新しい日常と向き合う努力を始めることにしたのです。
まず行ったのは、過去の自分と比較することを意識的にやめることです。これは簡単なことではありませんでしたが、「今の自分」ができることに目を向けるように練習しました。例えば、以前のように激しい運動はできなくても、自宅でできる軽い体操を取り入れてみる。長時間集中は難しくても、短い時間でできる作業に分解してみる、といった具合です。
また、自分の感情を素直に認めることも大切にしました。喪失感や悲しみを感じることは悪いことではないと自分に言い聞かせ、「今は辛いんだな」とそのまま受け止めるようにしました。信頼できる家族や友人、あるいは病気のコミュニティで、自分の気持ちを話すことも有効でした。同じような経験を持つ方々と話すことで、自分だけではないのだという安心感を得ることができました。
そして、新しい日常の中で「自分らしい幸せ」や「心地よさ」を見つける努力を始めました。以前は気に留めなかった、窓から見える景色や、温かい飲み物を飲む時の安らぎ、ゆっくりとした散歩の時間など、日常の中に散りばめられた小さな喜びに意識を向けるようにしました。大きな目標を持つことが難しくても、こうした小さな積み重ねが、少しずつ私の心を満たしてくれることを実感しました。
病気を通して、自分の限界を知り、無理をしないことの大切さを学びました。以前は頑張りすぎてしまう傾向がありましたが、「できないことはできない」と認め、休息を優先することも自分を大切にすることだと考えるようになりました。
現在の心境と、あなたへのメッセージ
もちろん、今でも病気以前の自分を思い出して、切なくなることはあります。喪失感が完全に消え去るわけではありません。しかし、以前のようにその感情に囚われ、自己否定に陥ることは少なくなりました。
それは、病気になったことで失ったものがある一方で、新しく得たものもたくさんあることに気づいたからです。自分自身の心と身体の声に耳を傾ける大切さ、日常の小さな幸せへの感謝、そして何よりも、どんな状況でも自分自身を受け入れ、大切にすることの重要性です。
もしあなたが今、「前のような自分」でいられなくなったことへの喪失感や、生活の変化によるストレスに苦しんでいるとしたら、一人で抱え込まないでほしいと思います。その辛さは、決してあなただけが感じているものではありません。
過去の自分に囚われる必要はありません。今のあなただからこそ感じられること、できることがきっとあります。焦らず、無理せず、今の自分自身を大切にすることから始めてみてください。そして、新しい日常の中に、あなたらしい小さな幸せや心地よさを見つけていく旅を、ゆっくりと歩んでいってほしいと願っています。あなたは一人ではありません。