病気になって感じる「他人との比較」の辛さ:SNSや周囲と自分を比べてしまう心をどう整えたか
病気によるストレス、特に「他人との比較」について、私の体験をお話しします
はじめまして。「ストレスとの声、みんなの体験談」にお越しいただき、ありがとうございます。病気を抱えながら日々を過ごされている皆様の中には、さまざまなストレスと向き合っていらっしゃる方が多いかと思います。私もその一人です。
私の体験談が、同じような状況にある方々にとって、ほんの少しでも心の支えや、ご自身の経験と重ね合わせるきっかけになれば幸いです。今回は、病気になって特に強く感じるようになった「他人との比較からくるストレス」についてお話しさせてください。
病気判明と、広がっていく「普通」との距離
私が病気を告知されたのは、予期せぬ出来事でした。突然の診断に頭が真っ白になり、この先の生活や治療への不安で押しつぶされそうになったことを覚えています。診断を受けた直後は、ただただ自分の体調や治療のことに精一杯で、他のことを考える余裕はありませんでした。
しかし、治療が始まり、日常生活に病気の影響が現れ始めると、次第に周囲の人々との違いを感じるようになりました。特に辛かったのは、SNSなどで友人や同僚が何気なく投稿する日常の風景を目にした時です。旅行に出かけたり、仕事で活躍したり、趣味を楽しんだり…彼らの「普通」の生活は、病気によって活動が制限された私には、遠い世界のように感じられました。
「なぜ、自分だけがこんな状況なのだろう」「あの頃のように、自分も自由に活動したいのに」。そんな思いが募り、友人たちの投稿を見るたびに、羨ましさや、置いていかれてしまうような孤独感、そして自分自身への否定的な気持ちが湧き上がってきたのです。
比べてしまう自分と、具体的なストレス
病気による身体的な辛さや治療の副作用に加えて、この「他人との比較」からくる精神的なストレスは、私の心を深く蝕んでいきました。
具体的には、以下のような状況で特に強くストレスを感じました。
- SNSや友人との会話: 皆が普通に過ごしている様子を見るたび、「自分は何をしているんだろう」と感じ、落ち込む。
- 仕事やキャリア: 病気でキャリアが中断したり、思うように働けなくなったりした時、同世代が昇進したり活躍したりしているのを知って、焦りや劣等感を強く感じる。
- 治療の進捗: 自分の病状や治療の反応を、他の患者さんの体験談などと比べてしまい、「なぜ自分は回復が遅いのだろう」と不安になる。
- 日常生活: 体調が不安定で、当たり前の家事や外出などもままならない時、「みんなは簡単にできているのに」と自己肯定感が下がる。
こうした比較は、私から「今、できること」を見る目を奪い、常に「できないこと」や「失ったもの」にばかり目を向けさせてしまいました。自分が情けなく感じたり、誰とも会いたくないと思ったり、心の波が激しくなることもありました。
比べてしまう心とどう向き合ったか:試行錯誤の道のり
この「比較からくるストレス」をどうにかしたい、そう強く思うようになりました。様々なことを試しながら、少しずつですが、心の持ち方を変えていきました。
まず試したのは、SNSを見る時間を減らすことでした。これは一時的に効果がありましたが、完全に情報を断つのは難しく、根本的な解決にはなりませんでした。
次に、比較してしまう自分自身を責めるのをやめようと努めました。「比べてしまうのは仕方ない。それは、それだけ元の生活に戻りたいという気持ちが強い証拠だ」と、自分の感情を否定せず受け入れる練習をしました。
そして、最も効果があったと感じるのは、「比べる対象を他人から自分自身に変える」という考え方です。過去の健康だった頃の自分と今の自分を比べるのではなく、「昨日の自分より、今日の自分は少しでも良い状態か」「病気がわかる前の自分にはできなかったけれど、今の自分だからこそ気づけたことは何か」という視点を持つようにしました。
具体的には、
- 小さな変化に目を向ける: 体調の小さな改善や、気分が少しでも上向いた瞬間など、日常のささやかな変化を意識的に見つけるようにしました。
- 感謝できることを見つける: 当たり前だと思っていたけれど、病気を経て改めて有り難いと感じるようになったこと(家族の支え、友人の優しさ、晴れた空の色など)に目を向ける時間を持ちました。
- 「今、できること」に焦点を当てる: 体調が良い時にできること、たとえベッドの上からでも楽しめることなど、現在の自分に可能な活動に意識を向けました。
- 病気と向き合う仲間と繋がる: 同じ病気や似たような状況にある人たちのコミュニティで、ありのままの気持ちを共有できる安心感は、孤独感を減らし、「自分だけではない」という感覚を与えてくれました。
- 自分にとっての「幸せ」や「価値観」を見つめ直す: 他人の基準ではなく、病気を経て自分が本当に大切にしたいものは何かを考えました。健康で活動的なことだけが価値ではない、ということに気づかされました。
こうした取り組みは、すぐに劇的な変化をもたらすものではありませんでしたが、少しずつ、「他人と比べて落ち込む時間」が減り、「今の自分自身を受け入れる時間」が増えていきました。完璧を目指すのではなく、「今日はこれができた」「こんなことを感じられた」と、自分自身のペースで前を向くことができるようになったのです。
現在の心境と、同じ悩みを抱える方へのメッセージ
現在も、体調の波はありますし、正直なところ、ふとした瞬間に「なぜ自分だけ…」と感じてしまうことも全くなくなったわけではありません。しかし、あの頃のように比較して深く落ち込むことは減りました。
他人と自分を比べてしまうのは、病気という困難な状況にある中で、自分の立ち位置が見えにくくなったり、元の生活に戻りたいという強い願いがあったりするからこそ、自然に生まれてくる感情なのだと思っています。それは決して、あなたが弱いからではありません。
もし、今、病気によって他人との比較で辛い思いをされている方がいらっしゃいましたら、どうかご自身を責めないでください。その辛さは、あなただけが感じているものではありません。
比べることを完全にやめるのは難しいかもしれませんが、少しずつ、「自分自身」を比べる対象の中心においてみることから始めてみてはいかがでしょうか。過去の自分、昨日の自分、そして今の自分。どんな小さな変化や成長も、どうか見逃さずに、ご自身をねぎらってあげてください。
病気と向き合う道のりは、一人ひとり異なります。他人と同じペースでなくても良いのです。自分自身の心と体の声に耳を傾け、あなたにとって心地よいペースを見つけていくことこそが、何よりも大切だと、私は自分の経験を通して感じています。
この「ストレスとの声、みんなの体験談」が、あなたが孤独を感じず、少しでも心を穏やかに過ごせる場所となることを願っています。そして、たとえゆっくりでも、ご自身のペースで希望を見つけ、前を向いて歩んでいけるよう、心から応援しています。