失ったものだけじゃない:病気を経て見つけた、人生の新たな光
診断後の喪失感と、見出された新たな光
病気によるストレスや不安を抱え、このサイトにたどり着いてくださった皆様へ。私もまた、病気の診断を受けたことで、それまでの人生設計が大きく崩れ、多くのものを失ったように感じた経験があります。当時の深い喪失感や絶望感は、今でも鮮明に覚えています。この記事では、私がどのようにその喪失感と向き合い、失ったものだけではない、人生の新たな光を見出すことができたのか、その体験をお話しさせていただきたいと思います。
病気が判明した時の衝撃と直後の感情
病気が判明した時、私はまず「まさか自分が」という強い衝撃を受けました。医師からの説明を聞きながらも、現実感がなく、まるで他人事のように感じていたことを覚えています。しかし、次第に事の重大さを理解するにつれて、将来に対する漠然とした不安が津波のように押し寄せてきました。
特に、仕事のこと、体力的なこと、そして何よりも「健康であること」という当たり前だと思っていた基盤が揺らいだことへの不安は計り知れませんでした。それまで当然のように計画していた未来が、一瞬にして不確かなものになってしまったのです。趣味や友人との交流、旅行といった楽しみにしていたことも、病気によって諦めざるを得ないかもしれない、という思いが心を占めました。失ったものは、健康という状態だけでなく、それまで築き上げてきた生活や、思い描いていた未来そのもののように感じられました。
具体的なストレスとその向き合い方
病気による具体的なストレスは多岐にわたりましたが、中でも私を最も苦しめたのは、未来への希望が見えなくなったことによる閉塞感でした。体調が不安定な日が多くなり、以前のように活動できない自分に苛立ちを感じたり、「もう元には戻れないのだろうか」という考えが頭から離れなくなったりしました。
また、周囲の人に病状を説明することや、自分の体調に合わせて予定を変更してもらうことへの気兼ねも大きなストレスでした。理解してもらえないのではないか、負担をかけてしまうのではないか、という不安から、次第に人との関わりを避けるようになり、孤立感を深めていきました。
この時期、私は「病気を受け入れ、前向きにならなければ」と無理に自分を鼓舞しようとしました。しかし、心の中は喪失感と不安でいっぱいでしたから、そのギャップに苦しみ、かえって落ち込みが深まるという悪循環に陥りました。無理に明るく振る舞おうとすることで、本当の気持ちを抑え込んでしまい、それがさらなるストレスとなっていたのです。
克服・軽減の道のり:失ったものから今あるものへ
そんな試行錯誤の中で、少しずつですが、私の心の持ち方が変わり始めたきっかけがありました。それは、ある日、ふと目に留まった「失ったものを数えるのではなく、今ここにあるものに感謝しよう」という言葉でした。当初は綺麗事のように聞こえましたが、深く考えてみると、私は失ったものばかりに目を向け、今持っているものや、まだできることを見ようとしていなかったことに気づかされました。
そこから、私は意識的に焦点を変える努力を始めました。まず、大きな目標を立てるのではなく、その日できたこと、体調の良い時に少しでも楽しめたことなど、小さな「できたこと」や「喜び」に目を向けるようにしました。体調に合わせて休憩を多く取ること、無理な予定は断る勇気を持つことなど、自分自身に優しくすることを心がけました。
また、信頼できる家族や友人に正直な気持ちを話すことも、大きな支えとなりました。完璧な理解が得られないこともありましたが、話を聞いてもらえるだけでも孤独感が和らぎました。そして、同じ病気を持つ方の体験談を読んだり、コミュニティに参加したりすることで、「自分だけではない」という安心感を得ることができました。他の人がどのように困難を乗り越えているのかを知ることは、私自身の考え方や行動のヒントになりました。
特に効果があったと感じるのは、「完璧を目指さない」という考え方を受け入れたことです。病気をする前は、何事も完璧にこなしたいと思う傾向がありましたが、体調に波がある中でそれは不可能だと痛感しました。完璧でなくても良い、できる範囲で十分だ、と自分に許可を与えることで、肩の荷が下り、心にゆとりが生まれました。そのゆとりの中で、以前は気づかなかった日常の小さな美しさや、人々の優しさに目を向けられるようになったのです。失ったものばかりを見ていた時には見えなかった、新しい視点がそこにありました。
現在の心境と読者へのメッセージ
現在の私も、体調に波はあり、完全にストレスがないわけではありません。しかし、病気になる前とは違う「心の軸」を持つことができていると感じています。失ったものに対する悲しみは完全に消えるわけではありませんが、そこにばかり囚われるのではなく、病気を経て見出した人生の新たな価値観や、今ある日常の中にある小さな幸せに目を向けられるようになりました。
病気になったことで、それまで当たり前だと思っていた健康や日常の尊さを改めて感じました。また、本当に大切な人間関係や、自分にとって譲れない価値観は何なのかを深く考えるきっかけにもなりました。ペースを落とすことで見えてくる景色があること、無理をしないことの大切さ、そして何よりも自分自身を大切にすることの重要性を、病気は教えてくれました。
同じように病気によるストレスや喪失感を抱えている皆様へ。今は先の見えない不安や、多くのものを失ったような気持ちでいるかもしれません。そのつらい気持ちを否定する必要はありません。どうか、ご自身の感情に正直に向き合ってください。そして、もし可能であれば、ほんの小さなことでも良いので、今、ご自身の周りにある光や、まだできることに目を向けてみる時間を少しだけ取ってみてください。
回復への道のりや、ストレスとの付き合い方は、一人一人異なります。焦る必要は全くありません。時には立ち止まったり、後退したりすることもあるかもしれません。それでも、一歩ずつ、ご自身のペースで歩んでいくことで、失ったものだけではなかった、人生の新たな側面や、自分の中に眠っていた強さ、そして新たな価値観を見出すことができる日がきっと来るはずです。
この場所が、皆様がご自身の経験と重ね合わせ、少しでも心が軽くなる、そして希望を見出すためのささやかな一助となれば幸いです。皆様が、ご自身のペースで穏やかな日々を過ごせるよう、心から願っています。