病気でエネルギーが続かない時:やりたいことと体調のギャップからくるストレスと、心穏やかに過ごす道のり
病気による「エネルギー不足」のストレスに寄り添って
病気と共に生きる日々は、さまざまなストレスを伴うものです。診断されたばかりの頃の不安や、治療による身体的な負担、そして周囲との関係性の変化など、挙げればきりがありません。その中でも、私が特に向き合うのに苦労したのが、「やりたいことはたくさんあるのに、体に必要なエネルギーがついてこない」というギャップからくるストレスでした。この体験が、もしかしたら今同じように感じていらっしゃる方の、心の重荷を少しでも軽くするヒントになるかもしれません。
病気が判明した時の戸惑いと、感じ始めたエネルギーの壁
病気が判明した時、私の頭の中は先の見えない不安でいっぱいでした。これからどうなるのだろう、仕事は続けられるのだろうか、家族に迷惑をかけてしまうのではないか。こうした不安に加え、治療の開始とともに顕著になったのが、以前には感じたことのないほどの強い疲労感でした。
それまでは、計画を立てて目標に向かって進むことや、興味のあることに積極的に取り組むことが当たり前でした。しかし、病気になってからは、少し体を動かしただけでどっと疲れたり、集中力が続かなかったりすることが増えました。朝起きるのも億劫になり、それまで楽しんでいたはずの趣味や活動も、体力的な負担を考えると始める前に諦めてしまうことが多くなったのです。
具体的なストレス:理想と現実の大きなギャップ
この「エネルギーが続かない」という状況は、私にとって大きなストレスとなりました。具体的には、以下のようなストレスを感じていました。
- 自己肯定感の低下: 以前はできていたことができなくなった自分を責め、「自分はダメになった」と感じるようになりました。頭ではやりたいことがたくさん浮かぶのに、体がついてこない現実とのギャップに、無力感や情けなさを感じました。
- 焦りやイライラ: 休むことが必要なのに、「こんなに休んでいてはいけない」「もっと頑張らなければ」と自分を追い立ててしまい、休んでいる間も心は落ち着きませんでした。周囲の人たちが活発に活動しているのを見るたびに焦りを感じ、時には体調が優れない自分自身にイライラすることもありました。
- 人間関係への影響: 約束をしていても、急な体調不良でキャンセルせざるを得ないことが増えました。友人との集まりや家族との外出も、体力的な不安から遠慮してしまうようになり、疎遠になってしまうのではないかという寂しさを感じることもありました。
- 将来への不確かさ: これまでのように活動できないということは、キャリアやライフプランにも影響が出るのではないかという不安に繋がりました。長期的な目標を持つことが難しくなり、先の見通せない状況に漠然とした恐れを感じていました。
ストレスとの向き合い方:試行錯誤の道のり
このようなストレスに対して、最初は「気力でどうにかしよう」と無理をして、かえって体調を崩すという悪循環を繰り返していました。しかし、それでは何も解決しないことに気づき、少しずつ向き合い方を変えていきました。
1. 「頑張らない」ことを許す
一番大きかったのは、「頑張れない自分」を許すということです。体調が優れない時は無理に活動しようとせず、横になることや休息を優先することを自分に許可しました。「休むことはサボることではない、回復に必要な時間なのだ」と意識的に考えるようにしました。最初は罪悪感がありましたが、休息を取ることで心身が少し楽になることを実感し、徐々に受け入れられるようになりました。
2. 小さな「できること」に焦点を当てる
以前のようにたくさんの活動をこなすことは難しくなりましたが、その代わりに、体調の良い時にできる「小さなこと」に焦点を当てるようにしました。例えば、読書が好きなら短時間だけ読む、軽いストレッチをする、部屋の一角だけ片付けるなど、少しでも達成感を得られるような目標を設定しました。大きな目標を一度に達成しようとせず、一つ一つの小さな「できた」を積み重ねることで、失いかけていた自信を少しずつ取り戻していきました。
3. 体の声に耳を傾ける習慣
体調は日々変化します。その変化に敏感になり、自分の体の声に耳を傾ける習慣をつけました。疲労を感じたら無理せず休む、痛みがある時は安静にする、といった具合に、体の状態に合わせて柔軟に過ごすことを心がけました。これは、完璧な計画通りに過ごすことよりも、その時々の自分の状態を尊重することが大切だと学んだ経験です。
4. 情報を取捨選択し、自分に合ったペースを知る
インターネットや書籍で病気に関する情報を集める中で、他の人の体験談や推奨される活動量などに触れる機会がありました。もちろん参考になる情報も多いのですが、自分と他人を比較して落ち込んでしまうこともありました。そこで、全ての情報に振り回されず、自分の体調や状況に合った情報を取捨選択し、自分にとって無理のないペースを見つけることに重点を置くようにしました。
克服・軽減の道のり:心持ちの変化
これらの試みを続ける中で、私のストレスとの付き合い方は少しずつ変わっていきました。特に効果があったと感じるのは、「今の自分にできること」に意識を向けられるようになったことです。以前は「できていないこと」ばかりに目がいっていましたが、視点を変えることで、たとえ小さなことでも、今の自分にできることがあるという事実に気づけるようになりました。
また、「完璧でなくても良い」と思えるようになったことも大きな変化でした。病気である以上、体調が不安定なのは当然のことです。その現実を受け入れ、「体調が良い時はできる範囲で活動し、悪い時はしっかり休む」という、柔軟な考え方ができるようになりました。これにより、焦りや自己嫌悪の感情が軽減され、心穏やかに過ごせる時間が増えました。
現在の心境と読者へのメッセージ
現在の私も、もちろん体調の波に悩まされることはあります。しかし、以前のように「やりたいのにできない」というギャップに過度に苦しむことは減りました。それは、できないことを嘆くのではなく、「今の私にできる最善は何か」を考え、小さな一歩を大切にするようになったからです。
もし今、病気によるエネルギーの低下や、やりたいこととのギャップからくるストレスに悩んでいらっしゃる方がいれば、どうかご自身を責めないでください。頑張れないのは、あなたの心が弱いからでも、努力が足りないからでもありません。それは、病気という状況の中で、あなたの体が懸命にバランスを取ろうとしている証拠です。
無理に「以前の自分」に戻ろうと焦る必要はありません。今のあなたのペースを大切にしてください。休息を許し、小さな「できた」を見つけ、体の声に耳を傾けることから始めてみませんか。そして、もし可能であれば、信頼できる人に今の気持ちを話してみることも、心の負担を軽くする一歩になるかもしれません。
病気と共に生きる道のりは、決して楽なことばかりではないかもしれません。しかし、その中でも、今の自分を受け入れ、ご自身に優しく向き合うことで、心穏やかに過ごせる時間を見つけることができると信じています。あなたは一人ではありません。この場所が、少しでもあなたの心の支えになれば幸いです。