「頑張って」「前向きに」と言われるのが辛かった時:病気によるプレッシャーと、自分を受け入れる道のり
はじめに
病気という状況と向き合う中で、私たちは様々なストレスを感じることがあります。身体的な辛さ、治療への不安、将来への不確かさ。それらに加え、「弱音を吐いてはいけない」「前向きでいなければ」といった、自分自身や周囲からのプレッシャーに苦しむこともあるのではないでしょうか。
私自身も、病気が判明してからしばらくの間、「ポジティブでいなければ」という見えない圧力に心が押しつぶされそうになった経験があります。この記事では、その時の率直な感情や、どのようにしてそのプレッシャーと向き合い、自分らしい心の持ち方を見つけていったのか、私の体験をお話しさせていただきます。同じような状況にある方にとって、少しでも心が軽くなるヒントとなれば幸いです。
病気判明と「ポジティブであれ」という無意識のプレッシャー
私が病気を診断されたのは、比較的突然のことでした。医師から病名を聞いた瞬間は頭が真っ白になり、その後は大きな不安と混乱が押し寄せました。今後の治療のこと、仕事のこと、家族のこと。ネガティブな思考がぐるぐると頭の中を駆け巡り、先の見えないトンネルに入ってしまったような感覚でした。
そんな中で、私は無意識のうちに「しっかりしなければ」「落ち込んでばかりいてはいけない」と自分に言い聞かせ始めていました。弱っている姿を人に見せたくない、心配をかけたくないという気持ちもあったかもしれません。そして、周囲からの「頑張ってね」「前向きにね」という励ましの言葉も、本来なら温かいものなのに、当時の私には「常にポジティブでいなければいけない」という別のプレッシャーとして感じられることがありました。
具体的なストレスと、空回りした「前向き」への努力
病気による具体的なストレスはたくさんありました。身体の痛みや倦怠感、治療の副作用、そしてそれらによる生活の変化。しかし、それらの辛さに加え、「ネガティブな感情を感じてはいけない」というストレスが私をさらに苦しめました。
例えば、体調が悪くて何もできない日でも、「こんなことで落ち込んでいる場合じゃない」と自分を責めたり、無理に明るく振る舞って疲弊したりしました。SNSで同じ病気の方の活動的な投稿を見ては、「自分はもっと頑張らなくては」「なぜこんなに落ち込んでいるんだ」と自己嫌悪に陥ることもありました。
本来の感情(不安、悲しみ、怒りなど)を心の中に閉じ込めてしまうことで、誰かに相談することも難しくなりました。「大丈夫だよ」と笑顔で答える裏側で、心はどんどん孤独になっていきました。この頃の私は、本当の自分と、周囲に見せようとする自分とのギャップに、非常に疲れていました。無理やりポジティブであろうとすればするほど、かえって心が重くなっていったのです。
ストレスとの向き合い方を変えたきっかけと、効果があった方法
そんな「無理なポジティブさ」に疲弊しきっていた私を変えるきっかけとなったのは、ある日、本当に何もできなくなって、どうしようもなく涙が溢れてしまった経験でした。その時、「もう頑張れない」と心の中でつぶやいた時、ふと「頑張らなくてもいいんじゃないか」という思いが芽生えたのです。
そこから、私は少しずつ、自分の心に正直になる練習を始めました。
- 感情の書き出し: 毎日、その日に感じたこと、辛かったこと、不安なことを、誰に見せるわけでもなくノートに書き出しました。良いことだけでなく、ネガティブな感情もそのまま言葉にすることで、自分の内面を整理し、客観視することができるようになりました。
- 信頼できる人への打ち明け: 勇気を出して、心から信頼できる数人の友人や家族に、正直な気持ちを話してみました。「辛い」「不安だ」「実は落ち込んでいるんだ」と伝えた時、彼らは否定せず、ただ私の話を聞いてくれました。その時感じた安心感は、今でも忘れられません。弱さを見せても受け入れてもらえる、という経験が大きな自信につながりました。
- 「〜ねばならない」を手放す: 「ポジティブでいなければならない」「人に迷惑をかけてはならない」といった固定観念を手放す努力を始めました。体調が悪い日は無理せず休む、できないことは「できない」と正直に伝える、といったように、自分の心身の状態を最優先にする許可を自分自身に与えました。
- 情報との距離感: SNSなどで他の患者さんの情報を見るのが辛くなった時は、一時的に距離を置くようにしました。自分自身のペースや状態に集中することを心がけました。
- 小さな「できたこと」に目を向ける: 毎日の中で、例えば「今日は少し散歩できた」「美味しいお茶を飲めた」といった小さなポジティブな出来事や、自分が「できた」ことに意識的に目を向けるようにしました。完璧ではない自分でも良い、と認める練習になりました。
これらの試みを通じて、私は無理に明るく振る舞うのではなく、どんな感情も自分の一部として受け入れることの大切さを学びました。ネガティブな感情を感じても、それは決して悪いことではなく、自然な心の反応なのだと思えるようになりました。
現在の心境と、読者の皆様へのメッセージ
現在の私は、病気や体調の波と付き合いながら日々を過ごしています。もちろん、今でも不安になったり、気分が落ち込んだりすることはあります。しかし、「そんな自分でも大丈夫だ」と思えるようになりました。無理にポジティブになろうとするのではなく、その時の感情を否定せず、ただ感じること、そして信頼できる人や方法で表現することを選んでいます。
ネガティブな感情を抱えながらも、小さな希望を見つけたり、感謝できることを見つけたりすることは可能です。それは「無理やり前向きになる」こととは全く違います。ありのままの自分を受け入れることが、結果として一番穏やかで、自分らしい心の状態につながるのだと実感しています。
もし今、「ポジティブでいなければ」というプレッシャーに苦しんでいる方がいらっしゃいましたら、どうかご自身を責めないでください。どんな感情も、あなたが病気と向き合い、一生懸命生きている証です。辛い時は辛いと感じて良いのです。泣きたい時は泣いて良いのです。完璧な自分でなくても、弱さを見せても、あなたは十分素晴らしい存在です。
あなたのペースで、一つずつ、心に優しい選択をしてみてください。そして、もし孤独を感じる時は、ここ「ストレスとの声、みんなの体験談」に、あなたの声を聞いてくれる人がたくさんいることを思い出してください。私たちは一人ではありません。