ストレスとの声、みんなの体験談

病気で揺らいだ自分自身:自己肯定感を育み直す道のり

Tags: 病気, 自己肯定感, ストレス克服, 心のケア, 体験談

導入

病気という状況に直面した時、心の中には様々な感情が湧き上がってくることと思います。不安や戸惑い、悲しみだけでなく、これまでの自分自身の価値観が揺らいでしまうような、複雑なストレスを感じることもあるかもしれません。特に、病気によって「これまでできていたことができなくなる」「以前の自分とは違う」と感じる時、自分自身の存在や価値に対する自信、つまり自己肯定感が大きく低下してしまうことは少なくありません。

私もまた、病気が判明してから、この自己肯定感の揺らぎに深く悩まされました。この体験談が、同じように自分自身への自信を失いかけている方々の、少しでも励みやヒントになれば嬉しく思います。

病気判明と直後の感情

病気の診断を受けたのは、ある日突然のことでした。医師から病名を聞かされた時、頭の中が真っ白になったことを覚えています。診断自体もショックでしたが、それ以上に、「この病気と一生付き合っていくことになる」という事実が、私の心を重く覆いました。

それまで、私は比較的健康で、仕事も趣味も精力的にこなしてきました。「自分は健康で体力がある」「多少無理をしても大丈夫」と、無意識のうちに自分の価値を「健康であること」「活動的であること」に強く結びつけていたのかもしれません。病気になったということは、その基盤が崩れてしまったように感じられ、「もう以前のようにはなれないのかもしれない」という不安が、私の心に深い影を落としました。将来への漠然とした恐れとともに、自分自身の価値が損なわれたように感じ、自己肯定感が急速に低下していくのを感じました。

具体的なストレスとその向き合い方

病気が進行したり、治療が始まったりするにつれて、具体的な身体的な辛さが増し、以前のように活動することが難しくなりました。これが、自己肯定感をさらに揺らがせる大きなストレスとなりました。

例えば、仕事では、以前は難なくこなせていた業務に時間がかかるようになったり、体調不良で急な休みを取らざるを得なくなったりすることがありました。同僚に迷惑をかけているのではないか、期待に応えられていないのではないか、と感じるたびに、「自分は役に立たない人間になってしまったのではないか」という思いが募りました。趣味で楽しんでいたスポーツも、病気のために続けることが難しくなり、大好きだった活動を奪われた喪失感とともに、「健康だった頃の自分」との比較が、私を苦しめました。鏡を見るたびに、治療の副作用による外見の変化に気づき、落ち込むこともありました。

これらのストレスに対して、当初は自分を責めることばかりでした。「なぜもっと早く気づけなかったのか」「もっと努力していれば病気にならなかったのではないか」といった後悔や、「病気になった自分はダメだ」という自己否定の感情に囚われていました。周囲の何気ない言葉に対しても、「健康な人には私の苦しみは分からない」「同情されているのではないか」と勝手に被害的に捉え、心を閉ざしてしまうこともありました。

克服・軽減の道のり

自己肯定感の低下に苦しむ中で、ある時、「このままでは心まで病んでしまう」と強く感じました。そこから、少しずつではありますが、自分自身と向き合い、自己肯定感を回復させるための道のりが始まりました。

まず意識したのが、「完璧な自分」を手放すことです。病気になったことで、以前のように全てを完璧にこなすことは難しくなりました。最初はそれに抵抗し、無理をして余計に疲れてしまいましたが、次第に「できないことがあっても仕方がない」「今の自分にできることを精一杯やれば良い」と考えるように変わりました。これは、決して諦めではなく、現実を受け入れ、自分に優しくなるための第一歩でした。

次に、「できること」に焦点を当てる練習を始めました。以前は大きな成果や活動にばかり目を向けていましたが、病気になってからは、日常生活の中の小さなことでも、「できたこと」を意識的に探すようにしました。例えば、「今日は少し長い時間散歩できた」「以前より痛みが和らいだ時間があった」「美味しくご飯が食べられた」など、些細なことでも良いのです。ノートに書き出してみたり、寝る前に心の中で振り返ったりすることで、病気の中でも自分にはまだ「できること」がある、という感覚を少しずつ取り戻していきました。これは、低下した自己肯定感を少しずつ積み上げていく、地道な作業でした。

また、信頼できる人に自分の正直な気持ちを話すことも、私にとって大きな支えとなりました。家族や友人、あるいは同じ病気を持つ人のコミュニティで、自己肯定感が揺らいでいること、自分を責めてしまうことを打ち明けた時、彼らは私を否定することなく、ただ話を聞いてくれました。「あなたは病気になったからといって、何も変わらない大切な存在だよ」と言ってもらえた時、張り詰めていた心が緩むのを感じました。自分一人で抱え込まず、感情を共有することが、心の回復には不可欠だと痛感しました。

そして、病気を通して、これまでの価値観が変わり、新しい自分の強みや価値観に気づくことができたことも、自己肯定感の回復につながりました。病気になったことで、物事の優先順位が変わりました。無理をせず、自分を大切にすること、人間関係の温かさ、日常の中のささやかな幸せに気づけるようになりました。これらの新しい視点や価値観は、健康だった頃の私には見えなかったものです。病気という困難を経験したからこそ得られた、自分自身の新しい側面だと捉えられるようになった時、自己肯定感は病気になる前とは違う形で、再び心の中に芽生え始めました。

現在と読者へのメッセージ

現在も病気と付き合いながらの生活ですが、自己肯定感が病気によって完全に失われるものではないということを実感しています。もちろん、今でも体調が悪い日や、落ち込んでしまうことはあります。そんな時、自己肯定感が揺らぐ感覚に再び襲われることもあります。しかし、以前のように自分を責め続けたり、全てを否定したりすることはなくなりました。揺らいでも、再び「できること」に目を向けたり、信頼できる人に話を聞いてもらったり、自分に優しく語りかけたりすることで、立て直すことができるようになりました。

病気によるストレス、特に自分自身の価値に対する不安や自己肯定感の低下は、多くの方が経験することだと思います。どうか、一人で抱え込まないでください。そして、自分を責めないでください。病気になったことは、あなたの価値とは全く関係ありません。

回復の道のりは人それぞれで、焦る必要は全くありません。まずは、今の自分に優しくすることから始めてみてはいかがでしょうか。完璧を目指すのではなく、小さな「できたこと」に目を向け、自分自身を少しずつ褒めてあげてください。信頼できる人に話を聞いてもらうことも、大きな心の解放につながります。

病気になっても、あなたの素晴らしい個性や経験、そして何よりもあなた自身という存在の価値は、決して失われることはありません。困難な状況の中でも、自分自身の肯定感を育み直し、前を向いていく力を、あなたもきっと持っています。

この体験が、今、自己肯定感の揺らぎに悩むあなたの心に、少しでも温かい光を届けられたなら幸いです。