病気による思考のループと不安:ぐるぐる思考から抜け出し、心の平穏を取り戻すまで
はじめに:終わりのない思考のループの中で感じていたこと
このコミュニティをご覧になっている皆さまの中には、病気の診断を受けて間もない方や、病気と向き合う中で様々なストレスを感じている方がいらっしゃると思います。私も以前、病気が判明してから、将来への不安や心配事が頭の中をぐるぐると巡り続け、出口が見えないような感覚に陥った時期がありました。
当時の私と同じように、考えたくないのに同じことばかり考えてしまう、漠然とした不安に囚われてしまうといった経験をされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは、私が病気による「思考のループ」というストレスとどのように向き合い、少しずつ心の平穏を取り戻していったのか、その体験をお話しさせていただきます。私の経験が、今、同じような状況にある方にとって、何か小さなヒントとなれば幸いです。
病気判明と、直後に襲ってきた不安の波
病気の診断を受けた日のことは、今でも鮮明に覚えています。医師から病名を聞いた時、頭の中が真っ白になり、その後の説明も半分ほどしか理解できていなかったように感じます。診察室を出て一人になった時、それまで抑え込んでいた感情が一気に溢れ出し、足元が崩れるような感覚に襲われました。
特に辛かったのは、家に帰って落ち着いた後、未来に対する漠然とした不安が止めどなく湧き上がってきたことです。「これからどうなるのだろう」「治療はうまくいくのだろうか」「仕事は続けられるのか」「家族に迷惑をかけてしまうのではないか」など、様々な心配事が次から次へと頭に浮かびました。一度考え始めると、まるでスイッチが入ったかのように、同じ不安や最悪のシナリオばかりを繰り返し考えてしまうのです。夜眠ろうとしても、心配事が頭の中でぐるぐる回り、なかなか寝付けない日が増えていきました。これが私にとっての、病気による最初の大きなストレス、「思考のループ」の始まりでした。
具体的なストレスと、無力だった初期の対処法
この「思考のループ」は、私の日常生活に様々な形で影響を及ぼしました。常に頭の中で不安が渦巻いているため、目の前のことに集中することが難しくなりました。仕事中も、ふとした瞬間に病気のことが頭をよぎり、作業が手につかなくなることもありました。友人や家族と話していても、心ここにあらずといった状態で、話の内容が頭に入ってきません。好きなことをしていても心から楽しめず、何をしていても病気や将来の不安がついて回るように感じました。
この状態から抜け出したくて、最初は「考えないようにしよう」と意識的に努めました。しかし、かえって「考えてはいけない」と思うほど、余計にそのことばかり考えてしまうのです。別のことを考えて気を紛らわせようとしても、すぐにまた不安な思考に戻ってしまいます。インターネットで情報を集めることにも没頭しましたが、調べれば調べるほど、様々な情報に振り回され、かえって不安が増幅される結果となりました。まるで、沼にはまっていくような感覚でした。
思考のループから抜け出すための試みと、効果があった方法
このままではいけないと感じ、私は様々な方法を試みました。試行錯誤を重ねる中で、特に効果があったと感じる方法がいくつかあります。
一つ目は、「考えを書き出す」ことです。頭の中でぐるぐる考えていることを、紙やノートに書き出してみました。最初はまとまりのない文章でしたが、書き出すうちに、自分が具体的に何に不安を感じているのかが少しずつ整理されていきました。書き出すことで、頭の中のモヤモヤが視覚化され、客観的に捉えられるようになったのです。これは、「思考」と自分自身との間に少し距離を置く手助けになりました。
二つ目は、「今できること」に焦点を当てる練習です。先のことを考えると不安になるのは当然のことですが、その「先」は、まだ来ていない未来です。そこで私は、「今日、今、自分にできることは何か」に意識的に目を向けるようにしました。例えば、「今日は主治医に聞きたいことをリストアップしよう」「明日は少しでも散歩をしてみよう」といった、小さな、手の届く目標を設定し、それを実行することに集中しました。大きな未来の不安に立ち向かうのではなく、足元の確実な一歩に意識を向けることで、無力感が和らぎました。
三つ目は、信頼できる人に話を聞いてもらうことです。病気のことを話すのは勇気がいりましたが、家族や親しい友人に正直な気持ちを打ち明けてみました。話を聞いてもらうことで、不安な気持ちを一人で抱え込まなくて済みました。話すうちに、自分の考えが整理されたり、相手からの温かい言葉に励まされたりすることもありました。また、同じ病気を経験した方のコミュニティに参加し、体験談を読んだり、自分の気持ちを書き込んだりすることも、孤独感を和らげ、共感を得られる場所があるという安心感を与えてくれました。
さらに、軽い運動を取り入れたり、趣味に没頭する時間を作ったりすることも、思考をリフレッシュさせる上で有効でした。完璧にやろうとするのではなく、「できる範囲で」「少しでも」という意識を持つことが大切だと感じました。
現在の心境と、同じ悩みを抱える方へのメッセージ
これらの試みを通じて、私の「思考のループ」は完全に消えたわけではありませんが、以前ほど長時間囚われることは少なくなりました。不安が湧き上がっても、「ああ、また考えてしまっているな」と冷静に観察できるようになり、書き出したり、別のことに意識を向けたりといった対処ができるようになりました。思考に振り回されるのではなく、思考と距離を置いて向き合うことができるようになったと感じています。
病気によるストレスは、目に見えないからこそ、一人で抱え込みやすいものだと思います。特に、不安な考えが頭の中を占めてしまうのは、とても辛い経験です。しかし、あなたは一人ではありません。同じように苦しんでいる人はたくさんいますし、様々な形で支え合える場所もあります。
もし今、「ぐるぐる思考」に悩まされているのであれば、まずはその辛い気持ちを認めてあげてください。そして、ほんの小さな一歩からで良いので、自分に合う方法を探してみてください。それは、誰かに話を聞いてもらうことかもしれませんし、自分の気持ちを書き出すことかもしれません。あるいは、ただ美味しいお茶を淹れて一息つくことかもしれません。
すぐに状況が変わらなくても、試行錯誤を続けること、そして何より、不安な中にいる自分自身に優しく寄り添うことが大切だと思います。焦らず、ゆっくりと、ご自身の心の平穏を取り戻していく道のりを歩んでいかれることを心から願っています。この体験談が、皆さまの心の負担を少しでも軽くするための一助となれば、これほど嬉しいことはありません。