ストレスとの声、みんなの体験談

先の見えない病状の中で、小さな目標がくれた希望:達成感を力に変えた体験談

Tags: ストレス克服, 目標設定, 希望, 心の持ち方, 体験談

はじめに:先の見えない日々の中で

病気と向き合う日々は、時に先の見えないトンネルの中にいるような感覚になることがあります。特に、診断を受けたばかりの頃や、治療が長期にわたる場合、これまで当たり前だった将来への計画や目標が立てられなくなり、漠然とした不安や焦りを感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。私もまた、そうした不安の中で立ち止まってしまった一人でした。この体験談が、同じような状況にある方にとって、少しでも心の光となることを願っています。

病気判明と直後に感じた不安、戸惑い

病名を聞かされた時、頭の中が真っ白になったことを覚えています。その瞬間から、それまで描いていた数年後の自分、仕事での目標、楽しみにしていた旅行の計画など、多くのことが絵空事のように感じられるようになりました。

特に辛かったのは、将来の見通しが全く立たなくなったことです。治療の見込み、回復までの期間、そして回復したとしても以前と同じような生活が送れるのかどうか、何もかもが不確かでした。これまで私は、目標を立て、それに向かって計画的に努力することで人生を切り開いてきたという自負があったため、先の見えない状況に置かれたことで、まるで羅針盤を失った船のように、自分がどこへ向かっているのか分からなくなり、深い戸惑いと絶望感に襲われました。

具体的なストレスと、その向き合い方

病気になって私が強く感じたストレスは、主に「計画が立てられないことによる将来への不安」と、「体調の波により計画通りにいかないことへの苛立ち」でした。

仕事では、長期的なプロジェクトに関わることが難しくなりました。友人との約束も、急な体調不良でキャンセルすることが増え、申し訳なさを感じました。楽しみにしていた趣味の時間も、思うように取れません。毎日、その日の体調を見ながら「今日は何ができるだろう」と手探りで過ごすことになり、これまでの「こうしたい」という気持ちと、現実のギャップに苦しみました。

特に辛かったのは、周囲の人たちがそれぞれの目標に向かって進んでいるように見えた時です。SNSなどで友人たちの活躍を見聞きすると、「自分だけが立ち止まっている」「このまま置いていかれてしまうのではないか」という焦りや、無力感を感じて落ち込むこともありました。

この「先の見えない状況」と「計画が立てられないストレス」にどう向き合うか、私は試行錯誤を繰り返しました。最初は、何とかして以前のように長期的な目標を持とうとしましたが、体調の変化に阻まれ、挫折感を味わうばかりでした。

そんな中で、ある日ふと、「大きな目標を追うのが難しいなら、もっと小さな、今日できることに目を向けてみよう」と思い立ちました。それは、まるで漂流している船が、遠くの港を目指すのではなく、目の前のわずかな陸地を頼りに進むような感覚でした。

克服・軽減の道のり:小さな目標がくれた光

この「小さな目標」に焦点を当てるという考え方が、私の心の持ち方を大きく変えるきっかけとなりました。

例えば、体調が良い午前中に「今日は椅子に座って30分読書しよう」とか、少し元気がある日に「簡単なスープを作ってみよう」、気分転換に「近所を一回りだけ散歩してみよう」といった、ごく短い時間で達成できる、日常の中のささやかな目標を設定し始めたのです。

これらの目標は、これまでの私が立てていたような、キャリアや長期的なスキルアップに関わるような大きなものではありません。しかし、目標を立て、そして実際にそれを達成できた時には、これまで感じたことのないような、静かで温かい達成感がありました。

「今日は読書できた」「スープが美味しくできた」「外の空気を吸えた」という、一つ一つの「できた」が、先の見えない不安の中で停滞していると感じていた自分に、「私は何もできていないわけじゃない」「この体調でも、できることはある」という肯定感を与えてくれたのです。

もし体調が悪く、目標を達成できなかったとしても、「今日は体調を整えることに集中できた」と考えるようにしました。完璧を目指すのではなく、「今日の自分にできること」を受け入れる練習を重ねたのです。

この小さな目標を積み重ねていく過程で、私は「大きな目標や計画がなくても、日々の小さな一歩が積み重なることで、前に進むことはできる」という感覚を掴みました。先の見えない状況は変わらなくても、日々の小さな達成感が心の支えとなり、漠然とした不安が少しずつ和らいでいきました。また、「できること」に目を向けることで、自分の今の状態を受け入れ、無理のない範囲で日々の生活を楽しむことの大切さを学ぶことができました。

現在と読者へのメッセージ

現在も、私の病状は完全に安定しているわけではなく、先の見通しが完全に立ったとは言えません。長期的な計画を立てることは、依然として難しいと感じる部分もあります。

しかし、私はもう、かつてのように将来が見えないことに絶望したり、大きな目標を持てない自分を責めたりすることはありません。日々の小さな目標を見つけ、それを一つずつ達成していくこと。そして、たとえ目標が達成できなくても、今の自分を受け入れること。この二つが、私にとって先の見えない病気と向き合う上での大切な指針となっています。

もし今、病気による先の見えない不安や、計画が立てられないことへの焦りを感じている方がいらっしゃるならば、まずは大きな視点から少し離れて、今日の、あるいは今の自分にできる、ほんの小さな目標に目を向けてみてはいかがでしょうか。

「ベッドから起き上がってみる」「お気に入りの飲み物を淹れてみる」「一曲だけ好きな音楽を聴いてみる」。どんなに小さく思えることでも構いません。そして、それが達成できたら、どうぞ自分自身を褒めてあげてください。

小さな一歩を踏み出すこと、そしてその一歩を自分で認めてあげること。その積み重ねが、きっと先の見えない状況でも、日々の生活に小さな光を灯し、希望を繋ぐ力になってくれると信じています。あなたは一人ではありません。焦らず、ご自身のペースで、一歩ずつ進んでいきましょう。